FXのサヤ取りとは?手法としてアリなのか、リスクや失敗例なども解説
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FXには、俗に「サヤ取り」と呼ばれている取引手法があります。
基本的にローリスク・ローリターンな手法なので、「とにかくリスクを抑えたい」という人は気になっているのではないでしょうか。
この記事では、サヤ取りの具体的なやり方や注意点、失敗してしまうポイントなどを解説しています。
目次
サヤ取りとは?FXで使われる手法の概要を解説
FXの業界で使われる「サヤ取り」という手法には、いくつかのやり方があります。
相関性のある2つの通貨ペアを両建てにして利益を狙うものや、異なるFX会社にまたがって同じ通貨ペアの両建てをしてスワップポイントの差額を得るものが知られています。
ただいずれにせよ「FX会社とポジションを複合的に絡めることでリスクを抑えつつ利益を狙う」のがサヤ取りの基本であると考えてよいでしょう。
サヤ取りのやり方
それでは、具体的なサヤ取りの方法を3つ紹介しましょう。
1つめはFX会社によってスワップポイントが異なることを利用した最も有名なサヤ取りを、2つめと3つめは現在通用しなくなっている方法も含めてサヤ取りの概念を解説します。
業者間のスワップ差に着目したサヤ取り
あるFX会社(A社とします)と、もうひとつのFX会社(B社とします)とでは「同じ通貨ペアでもスワップポイントが異なる」場合があります。
こうしたスワップポイントの違いを利用して、例えば米ドル/円の受け取りスワップポイントが大きいA社で買いポジションを保有し、支払いスワップポイントが少ないB社で売りポジションを保有するのがサヤ取りです。
異なるFX会社で両建てをしているのでレート変動による損益は常に「トントン」に近い状態になり、レート変動によるリスクを抑えながらスワップポイントの差額を獲得することができます。
それでは実際に2つのFX会社でサヤ取りをする実例を紹介しましょう。ここではDMM FXとトレイダーズ証券のみんなのFXをピックアップしました。
2023年3月13日の米ドル/円について、両社の1万通貨あたりのスワップポイントをご覧ください。ご覧の通り、両社のスワップポイントには違いがあります。
FX会社 | 買いポジション(受け取り)のスワップポイント | 売りポジション(支払い)のスワップポイント |
---|---|---|
DMM FX | +178 | -181 |
みんなのFX | +170 | -170 |
そこで、赤字で示したようにDMM FXで買いポジションを保有し、みんなのFXで売りポジションを保有することで、差額の8円を毎日獲得できることになります(今後もスワップポイントが変わらない場合)。
これが、異なる2社のスワップポイントの差を利用したサヤ取りです。
相関性のある通貨ペアのスワップポイントを狙ったサヤ取り
相関性の高い2つの通貨ペアにまたがって買いと売りそれぞれのポジションを保有し、スワップポイントの差額を狙うサヤ取りもあります。
現在ではできなくなってしまいましたが、かつてユーロ/円とポーランドの通貨であるズロチ/円を両建てにすることでサヤ取りができたことがありました。その理由は、ユーロとズロチの高い相関性です。
こちらのチャートをご覧ください。
青色がユーロ、オレンジ色がズロチです。ポーランドはEU加盟国であることからEUの通貨ユーロとの相関性が高く、ズロチ/円で買いポジションを保有し、ユーロ/円で売りポジションを保有することによって為替損益を相殺しながらスワップポイントを受け取ることができました。
相関性のある通貨ペアの為替差益を狙ったサヤ取り
次に紹介するのは、スワップポイントではなく為替差益を狙うサヤ取りです。このサヤ取りでも、相関性の高い2つの通貨ペアを利用します。よく用いられるのは、同じオセアニア通貨である豪ドルとNZドルです。
それではこの両通貨についても、豪ドル/円とNZドル/円の推移を比較してみましょう。
おおむね同じような動きをしていることが分かります。
しかし、高い相関性があるとはいっても両者は異なる国の通貨です。オーストラリアやニュージーランドのどちらか一方の国の事情などで、一時的に相関性が崩れて価格が乖離することがあります。
先ほどのチャートでは、黄色の囲みを入れた部分がその一例です。
しかし両者には相関性があるので、やがて元の相関性を取り戻す可能性は高いでしょう。
そこで相関性が崩れた時を狙って豪ドル/円の売りとNZドル/円の買いをすることにより、この2つの通貨が元の相関性を取り戻す動きを利用して利益を出すことができます。
サヤ取りに興味のある人が知っておくべき注意点
ここまでの具体例を見ると、サヤ取りは有用性が高く、とても高い確率で利益を出せると感じるかもしれません。もちろん利益を出せる可能性は高いのですが、その一方で注意点もあります。
ここでは、実際にサヤ取りをやってみたいという方に向けて、3つの注意点を解説します。
- 決して「損失が出ない手法」ではない
- 2つ分のポジションを持つ資金が必要
- 大きな利益を狙うのは難しい
決して「損失が出ない手法」ではない
誰でも簡単に利益を出せるように見えるサヤ取りですが、投資の世界に「絶対」はありません。
サヤ取りであっても損失が出ることはあるので、「100%勝てる必勝法」と思わないようにしましょう。
詳しくは後述しますが、当初の思惑の通りにならないことは多々あります。
特にスワップポイントを狙うサヤ取りは「最初にポジションを建てれば放置していてもよい」と思われがちですが、こまめにチェックしておかないと知らない間に損失が膨らんでしまうこともあります。
2つ分のポジションを持つ資金が必要
どの形でサヤ取りをする場合であっても、売りと買いのポジションを両建てで保有することになります。そのため一般的なFX取引と比べると単純に倍の証拠金が必要になります。
サヤ取りの有用性が理解できたとしても、それを実践できるだけの資金がなければ絵に描いた餅になってしまいます。
大きな利益を狙うのは難しい
サヤ取りは基本的に、ローリスクローリターンの投資手法です。
なぜなら両建てによって為替損益を相殺しているため、「FXの華」ともいえる大きな為替差益を狙えるわけではありません。
先ほど紹介した豪ドルとNZドルのサヤ取りについても、「乖離が収束した分」以上の利益を狙えるわけではないので、通常のトレードで利益を上げるのと比べると、サヤ取りの限界を感じるでしょう。
サヤ取りが目論見通りにいかない失敗例
盤石に見えるサヤ取りですが、目論見通りにならないことも多々あります。ここでは、サヤ取りが失敗してしまう主なパターンを3つ紹介します。
こうしたことが現実に起きる可能性があることを、しっかり留意しておいてください
双方のポジションがマイナスになってしまう
相関性が高い2つの通貨ペアで乖離が起き、それを狙ってサヤ取りのトレードをしたとします。しかしその乖離拡大がピークであるとは限りません。さらに乖離が拡大して、双方のポジションが含み損になってしまうこともあります。
先ほど紹介した豪ドル/円とNZドル/円の例を使って解説しましょう。
両通貨の乖離が始まった部分に黄色の囲みを入れました。この時点でサヤ取りトレードをしたとすると、豪ドル/円の売りポジションとNZドル/円の買いポジションを保有することになります。
しかし、実際にそのあともさらに乖離が拡大しているので、豪ドル/円の売りポジション、NZドル/円の買いポジションが、それぞれ含み損になってしまいます。
それでも我慢して持っておくのも戦術のひとつですが、証拠金が枯渇してしまうとロスカットとなり、サヤ取りどころか大きな損失を出してしまうことになります。
片方のポジションがロスカットになる
先ほどロスカットのリスクについて触れました。このリスクは乖離が埋まることを想定したサヤ取りだけでなく、スワップポイント狙いのサヤ取りトレードでも十分注意する必要があります。異なるFX会社にまたがって両建てをする場合、片方のFX会社では含み益になりますが、もう一方のFX会社では含み損になります。
含み損が出ているFX会社で証拠金が足りなくなってしまうとロスカットとなり、サヤ取りの形が崩れるだけでなく大きな損失となってしまいます。
これを回避するには証拠金に十分な余裕を持たせることが有効ですが、そのためには双方のFX会社にまとまった証拠金を入れておく必要があり、やはりサヤ取りには資金力という高いハードルがあることを再認識させられます。
スワップポイントが変動してしまう
スワップポイントの差額を狙うサヤ取りを成功させるには、2つのFX会社で買いと売りのスワップポイントに差があり、しかもその差がプラスになっている必要があります。
しかし、スワップポイントはFX会社がそれぞれ決めるものであり、金利や経済の情勢によって日々変動しています。サヤ取りを始めた時は差額がプラスになっていても、やがてそれが逆転してしまい、差額がマイナスになることも十分にあり得ます。
差額が小さい通貨ペアやFX会社を利用するとスワップポイントの変動によってサヤ取りの形が崩れる可能性があるので、通貨ペア選びとFX会社選びがとても重要です。
サヤ取りはFXの取引手法として使えるのか?経験談・実例などを紹介
編集部スタッフの知っている事例としては、豪ドル/円のスワップポイントを狙ったサヤ取りトレードをした人の例があります。
買いポジションは豪ドル/円の買いスワップポイントが高いヒロセ通商、売りポジションはDMM FXで、それぞれ10万通貨ずつ建てる戦略です。
最初に注意するべき点は、異なるFX会社でほぼ同じレートでポジションを建てることです。これがずれてしまうと両建てとして機能しない可能性があるので、スプレッドが狭くなる時間帯なども考慮してポジションを建てる必要があります。
この実践者はFXが専業ではなく、基本的に放置するトレードを好む傾向があるため、スワップポイントの差額をコツコツと貯めていくサヤ取りトレードに向いた性格といえます。
ただし、やはりサヤ取りは必要な証拠金額が大きくなるため、ロスカットを防ぐための余裕資金を含めると資金量が多くなることがネックだと感じていたようです。
資金を投じた割には利益が少ないというのも、多くのサヤ取りトレード実践者に共通する感想と同様でした。
サヤ取りに興味がある人におすすめする他の取引手法
サヤ取りに関して「チャート画面に張り付く必要がなく、基本的に放置するだけでお金が増える手法」というイメージを持っていた人も、ここまでのコンテンツを読んで「実際にやるとなると難しい点も多い」ということにショックを受けたのではないでしょうか。
基本的に放置できるFXトレードは、サヤ取りだけではありません。ここではサヤ取り以外の有効な投資手法を2つ紹介します。
自動売買
最初に売買のルールを設定しておくと、あとは自動的に新規と決済の発注を繰り返してくれるのがFXの自動売買です。人間の感情が入り込まないため、設定した売買ルールの有効性が高ければ放置しているだけで利益を積み重ねてくれます。
マネースクエアの「トラリピ」をはじめとするリピート系の自動売買や、MT4(Meta Trader 4)やMT5(Meta Trader 5)にEAと呼ばれる自動売買プログラムを組み込み、プログラムが発する売買シグナルに従って自動売買をするタイプなどがあります。
両建てしない通常のスワップポイント運用
放置しているだけで利益を積み重ねたいのであれば、両建てをせずにスワップポイントの高い通貨ペアのポジションを保有し続ける手法も有効です。
スワップポイント狙いのトレードとしてFXの世界では王道のひとつといえますが、もちろん両建てではないので為替差損のリスクはあります。
しかしながら逆に為替差益になる可能性もあるわけで、スワップポイントと為替差益で「ダブル」の利益を狙うことができるのも魅力的です。
サヤ取りに関するQ&A
サヤ取りは禁止されていますか?
「サヤ取り」というのは、実際には異なるFX会社でポジションを保有するだけでもあります。つまり、それを禁止しているFX会社はありません。
サヤ取りのメリットとデメリットは?
為替差損のリスクを抑えつつ手堅く利益を狙える点は、サヤ取りのメリットです。
しかしその一方で両建てにするための資金が必要になること、それだけの資金を投じる割には利益が少ないこと、そして絶対に負けないわけではないということは、留意しておくべきデメリットです。
サヤ取りについてのまとめ
- 俗にいう「サヤ取り」にはいくつかの手法がある
- 現在もっとも有効性がありそうなのは、異なるFX会社のスワップ差を利用した方法
- ただサヤ取りをするためには多くの資金が必要であり、そのわりに利益は少ない
- ローリスクではあるものの、損失リスクがゼロになるわけではないので注意が必要
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、現在は自動売買を中心に運用中。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力し、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。
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記事の編集責任者
FINANCIAL JOURNAL編集長
齋藤直人
編集者歴20年以上。主に紙媒体で編集経験を積み、趣味系雑誌4誌の編集長を歴任。
雑誌の特集記事だけでなく、企業とのタイアップ企画、地域活性化事業への参画など、コンテンツ制作力を活かして幅広いフィールドで活躍。国会議員、企業の重役、スポーツ選手、芸能人などジャンルを問わず幅広いインタビュー経験を持つ。
FXトレーダー歴も5年以上あり、好きなトレードスタイルはスイングトレード。これまでの最大勝ち幅は1500pips
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