テーパリングとは?これから何が起きる?資産を守るための運用法は?
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「なぜ今、テーパリングが話題になっているの?」
「テーパリングが始まると株価はどうなる?資産運用はどうしたらいい?」
米国連邦準備理事会(FRB)は2021年9月に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)で年内のテーパリング開始について前向きに発言しています。
そもそもテーパリングとは何でしょうか?
テーパリングが始まると市場はどうなるのでしょうか?
テーパリングの基本知識をはじめ、テーパリング開始後の市場の動きや、これから投資家が資産運用において意識するべきことについて、わかりやすく解説します。
動画でも説明していますので、ぜひ記事とあわせてご覧ください。
目次
テーパリングとは?基礎知識を解説
投資家の間で話題になっている「テーパリング」とは何なのか、テーパリングの基礎知識を解説しましょう。
また、テーパリングが行われることによって何が起こるのかも一緒に見ていきましょう。
テーパリングとは「量的緩和」を段階的に縮小すること
民間の金融機関は、米国連邦準備理事会(FRB)が国債等を売却して受け取った資金で、積極的に融資を行い、経済活動の活発化をはかります。
テーパリングは、量的緩和が一定の効果をあげた段階で始まることから、「テーパリング=金融緩和の終わりの始まり」とみなされることもあります。
FRBは新型コロナウイルスの感染拡大以来、大胆な利下げ(金融緩和)と、量的緩和を続けていました。その結果もあり、景気回復が徐々に見込まれつつある今、FRBは「2021年内のテーパリング開始」を言及したわけです。
テーパリングで何が起こる?金利は?為替は?株価は?
一般的にテーパリングは中央銀行の国債の買い入れが少なくなることで需給が緩み「長期金利が上昇」します。
民間企業の借り入れコストにあたる長期金利が上昇するので、「株価が下がる」というのが教科書的な考え方です。
テーパリング開始による株価の調整は少なからず考えられますが、ここで注意したいのは、テーパリング開始による株価への影響よりも、ポイントはむしろ、テーパリングが終わった後に控えている「政策金利」の引き上げです。
政策金利が引き上げられた結果、次のような事態が想定されるのです。
金利
民間の金融機関が扱う預金や債券の金利、さらには住宅ローンなどの金利も上昇します。
為替
「金利が高い通貨にお金が集まる」傾向があるため、米国でテーパリングが始まれば、金利のつかない円から金利のつくドルへお金が流れる、つまり、ドル高円安の傾向になると考えられます。
株価
金利が上昇すると、企業はお金が借りにくくなるため、企業業績は縮小の傾向に。結果として、株価も下がりやすくなります。株式から金利の高い債券へと資金が流出する動きも考えられます。
テーパリングが注目されている理由は?テーパリングはいつ起こる?
では、なぜ今テーパリングに注目が集まっているのでしょうか?
テーパリングはいつ頃、起こるのでしょうか?
わかりやすく解説していきましょう。
コロナ禍で大規模な量的緩和が行われていた
日米欧など世界の中央銀行は、2020年3月以降、大胆な金融緩和政策を続けてきました。
具体的には、政策金利の引き下げと量的緩和です。
いずれも、コロナ禍による経済の落ち込みを軽減することが目的です。
例えば米国のFRBは、2020年3月に2回にわたり政策金利の引き下げを行い、これにより米国の政策金利はほぼゼロになりました。
金利を引き下げると、企業はお金を借りやすくなり設備投資などをしやすくなる、個人も住宅購入が活発になるなど、景気を刺激する効果が期待できます。
ところが、コロナ禍による経済の落ち込みは、金利の引き下げのみでは支えきれないほど深刻でした。
これ以上金利を引き下げることもできないため、もう1つの金融緩和政策が実施されました。それが量的緩和だったのです。
FRBは手はじめに米国債5,000億ドル、住宅ローン担保証券2,000億ドルを購入。その後も国債等を買い続け、現在(2021年10月時点)のFRBの総資産は量的緩和が始まる直前のおおよそ2倍となる8.4兆ドル(約930兆円)にのぼっています。
年内テーパリング実施の可能性が高まっている
2021年9月、FRBのジェローム・パウエル議長が「2021年11月にテーパリングの開始を決定する」と発表しました。
これは量的緩和が一定の効果をあげたことを意味しています。
参考:2021年9月の注目イベント 米国でのテーパリング議論の進展や、日本の政治イベントに注目
世の中に供給された大量のお金の一部が株式の購入にまわったことで、新型コロナショックの直後に大暴落した株価は、その後急回復。2020年から2021年にかけて、世界的に株高の傾向が続いています。
また、雇用者数の増加や物価上昇を見ても、コロナ禍で傷んだ経済活動は、回復の傾向があります。
投資家はテーパリングを警戒している?
量的緩和は落ち込んだ景気を刺激するための政策です。景気が回復した後も続けると景気は過熱し、急激なインフレ、物価高を引き起こす懸念があります。
そのためFRBは、インフレや物価高を避けるためにもテーパリングを行い、その後政策金利の引き上げを実施することで市場を正常な状態に戻そうとしているのです。
そこで投資家が気にしているのは金融市場、特に株式市場への影響です。
自分の大切な資産を守り、着実に増やすためにはどうしたらいいのか? 投資家の関心は、そこにあります。
これから株式市場で何が起きる?テーパリング前後のシナリオを解説
では実際のところ、今回のテーパリングで何が起こりそうなのか、解説していきます。
先に結論をいうと、今回のテーパリングでは、米国の株式市場で株価が大きく下落する可能性は低いと考えています。
前回のテーパリングでは「バーナンキショック」が起きた
今回のテーパリングの影響を予想する上で参考になるのが、前回のテーパリングです。
米国はこれまでに3回、テーパリングを行った過去があります。そのうち直近のものは、2013年12月に宣言し、2014年1月に開始されたテーパリングです。
テーパリングが発表される半年ほど前の2013年5月、当時のFRB議長であるベン・バーナンキ氏は突然テーパリングを示唆。
すると長期金利が1.9%から3%台へと急上昇しました。
米国の代表的な株価指数であるS&P500は、2013年の5月から6月にかけて5.8%も下落しました。
これがいわゆる「バーナンキショック」と呼ばれる市場の混乱です。
つまり前回はテーパリングを示唆しただけで、株式市場は大きな影響を受けたのです。
しかし、このとき株式市場が下落したのは、2つの点でFRBが対応を誤ったからだと考えられています。
- 1つ目は、バーナンキ氏の発言が事前に全く予想されていなかったことです。
そのため株式市場は「不意打ち」を食らって下落しました。株式市場は、突然の悪材料に対してもろい性質を持っているのです。 - 2つ目は、バーナンキ氏の発言によって、投資家は「テーパリング=金利の引き上げ」を直接的に結びつけて考えてしまったことです。
今回のテーパリングはすでに「織り込み済み」、大きな株価下落は考えにくい
しかし今回のテーパリングでは、米国の株式市場で株価が大きく下落する可能性は低いと考えられます。
実際、2021年9月にFRBのパウエル議長が「11月にテーパリングの開始を決定する」と発表したときも、前回のような混乱は起こりませんでした。
それは、前回の誤りを繰り返さないよう、FRBは慎重にことを進めているからです。
テーパリングの実施については、それ以前からパウエル議長は何度も言及していました。
また、テーパリングと金利の引き上げとはしっかり切り離しており
「テーパリングの開始はそのまま利上げを意味しない」
と強調しているのです。
そのため、株式市場はすでにテーパリングを織り込み済みの状況といえるでしょう。
つまり、これから正式にテーパリングが発表されても、それは事前に予想されていたこと。
こうした状況では、テーパリングが開始され、株価の調整が起きたとしても、大きな株価下落は考えにくいといえます。
そしてテーパリング終了後、FRBは市場との丁寧な対話を重ねながら政策金利の引き上げに踏み込んでいくシナリオになると想定しています。
ズバリ、テーパリング前後で投資家は何をすればいい?
それでは投資家はどんな心構えでテーパリングを迎えるべきか、また資産運用の方針をどうするべきかを解説していきます。
先に結論からいうと、「長期・分散・積立投資を続けること」です。
粛々と長期投資・積立投資の継続を
前述のように、今回のテーパリングでは、すぐさま株価が大きく下落する可能性は低いと考えています。
ただし、いずれ金利の引き上げが行われる場面ではしばしば株価の調整はあると考えられます。
したがって、資産形成期にある若い方は、テーパリングもその後の利上げも気にすることなく粛々と「積立投資」を続けましょう。
なぜなら、基本的に株式というものは、一時的に大きく値下がりすることはあっても、長期的には成長していく資産だからです。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)や、つみたてNISAなどの非課税制度を活用して、毎月決まった額で投資信託を積み立てていくだけでよいのです。
また、すでにまとまった資産を運用されている方も目先の株価動向に右往左往することなく、長期的な運用を心がけましょう。
<iDeCo(イデコ)とは?>
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、投資信託や定期預金、保険といった金融商品を、毎月同じ額(掛け金)だけ自動的に積み立てながら運用していき、リタイア後に老後資金として受け取る年金制度です。掛け金の全額が所得控除され、節税効果が期待できます。
<つみたてNISA(ニーサ)とは?>
つみたてNISAとは、投資信託やETF(上場投資信託)など金融庁が認めた一部の金融商品を、毎月同じ額だけ自動的に積み立てながら運用していく非課税制度です。投資可能枠は年間40万円で最大20年間投資できます。つみたてNISAで得られた運用益は全額非課税になります。
具体的な金融商品を挙げるならば、全世界の株式に低コストで分散投資できる「全世界株式型のインデックスファンド」1本で積立投資をするのでも構わないと考えています。
上記の非課税制度を超えて投資できるだけの余裕があるなら、一時的に株価が下落したところを見計らって、スポット買い(一時買い)に動くのも手ですが、基本は毎月の積立投資だと考えましょう。
まとめ:テーパリングを警戒しすぎず資産運用を続けよう
これまでテーパリングについて解説してきましたが、重要なポイントを以下にまとめてみました。
- テーパリングとは、中央銀行が買い入れる資産の額を徐々に減らしていくこと
- 今回のテーパリングはすでに織り込み済みであり、市場が大きく混乱する可能性は低い
- テーパリング終了後には政策金利の引き上げが控えている。金利引き上げは株価にとってマイナス要因
- 目先の株価の動きに一喜一憂せず、長期・積立・分散投資を心がけるべき
テーパリングが招く株価下落を警戒するあまり、「しばらくは投資を控えたほうがいいんじゃないか」「いま利益が出ている銘柄は、株価下落の前にいったん現金化したほうがいいんじゃないか」と心配する人もいるかもしれません。
しかし株式市場はすでにテーパリングを織り込み済みで、暴落と呼べるほどの株価下落が起きる可能性は低いといえます。
また、その後の政策金利の引き上げによって株価が下落することはあっても、長期的に見ればゆっくり成長していくのが株という資産の特徴でもあります。ここで投資をストップさせてしまっては、みすみす利益獲得のチャンスを逃すことになりかねません。
テーパリングの直前直後もこれまでと変わりなく、長期・積立・分散投資を心がけながら、資産運用を続けるのがおすすめだといえます。
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講師は大手証券会社の支店長も務めたこの道32年のプロフェッショナルです。
日本証券アナリスト協会認定のシニア・プライベートバンカー※ 資格も持つ、まさに金融エキスパートです。
※「シニア・プライベートバンカー」は富裕層の総合的な資産運用・管理に関する知識やサービスを体系化した PB教育プログラムの最上位の資格です。
記事の編集責任者
FINANCIAL JOURNAL編集長
齋藤直人
編集者歴20年以上。主に紙媒体で編集経験を積み、趣味系雑誌4誌の編集長を歴任。
雑誌の特集記事だけでなく、企業とのタイアップ企画、地域活性化事業への参画など、コンテンツ制作力を活かして幅広いフィールドで活躍。国会議員、企業の重役、スポーツ選手、芸能人などジャンルを問わず幅広いインタビュー経験を持つ。
FXトレーダー歴も5年以上あり、好きなトレードスタイルはスイングトレード。これまでの最大勝ち幅は1500pips
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